事業承継協会 兵庫支部 7月例会 サマリー
日時:2026年7月9日
主催:事業承継協会 兵庫支部
講師:事業承継センター株式会社 代表取締役 金子一徳 氏
テーマ:「実際の事業承継支援 ~事例と現場のリアル~」
■ 総論:なぜ今、事業承継支援か
・社長の全国平均年齢は72歳、約6割の企業が後継者不在。後継者は「探す」から「見つけて育てる」時代へ(事業承継計画書・後継者塾の推進、承継期間は最短3年でやり切る)。
・経営承継円滑化法など法制度が10年で様変わり(特例承継計画は2027年9月末までに提出、手続きは2027年末まで)。制度を知らずして承継支援はできない。
・事業承継では①人の出入り②顧問の交代・解任③メインバンクの入替が起こる。放置すれば会社も顧問の地位も危ういが、後継者と結びつく好機でもある。
・AI時代、士業が生き残るのは「人の感情・意思を扱うアナログ領域」。事業承継士は中立公正な立場で経営者と後継者の双方を取り持つ。株価・節税より、事業の中身・経営理念・知的資産をどう継ぐかが本筋。
■ 事例演習:親族外承継の問題点と解決
・企業概要:防水工事を主体とする設備工事業(神奈川県)。年商7~8億円、経常利益50~70百万円、純資産30百万円、従業員10名。社長はガン宣告を受け承継を急ぐが、節税優先の顧問税理士で頓挫→2年後のSOSで当方が受託。
・関係者(発行済600株):会長=夫(創業者・480株)、社長=本人(代表取締役・90株)、義母(30株・2012年死亡、遺産分割未了)、専務A氏(他人・0株・実務2年トップ=後継候補)、長男(取締役34歳・鬱病)、長女(社員32歳)。
・株価算定:相続税評価58,923円(売買)/55,888円(贈与)、配当還元22,916円。
■ 7つの課題と実施策(事業承継センターの解決策)
①株式の取得資金
2/3を専務A氏、1/3を長男へ。相続税評価額で買取り、役員報酬を増額して返済原資に。不足は金融機関融資(貸出金利と連動)。長男分はいずれA氏が買取り。
②後継者A氏の育成
実務は既に2年トップで問題なし。経営者教育は承継者育成・伴走支援で会社負担。
③義母株式の宙浮き
遺産分割協議を早期に決着させ、定款変更+売渡請求で整理(相続人共有・M&A時のリスクを解消)。
④長男の処遇
非常勤取締役(名誉職)へ。一般社員に降格し月給40万円に引下げ。株式は一部のみ保持。
⑤長女の処遇
他社転職が可能で長男と不仲のため退職(社長から本人へ説明)。相応の退職金を支給。
⑥社長の役員退職金
慰労金規程で約1.6億円(210万×29年×2.4+α)。死亡退職金化で遺留分対策。退職金保険5千万円+融資で捻出。
⑦経理の引継ぎ
A氏の妻が経理を担当(先代も夫婦経営で会長も納得、A氏は経営に専念)。
■ まとめ・成功のポイント
・経営者と後継者には厳しめの条件を提示し、調整弁を持ちながら着地させる。2/3譲渡のため配当還元ではなく相続税評価額で購入してもらった。
・人間関係・役職・お金の整理は、オーナーチェンジと同時に一気に行う。会長がアドバイスを理解したことが本案件成功の最大要因。
・報酬は25万円×7ヶ月+他専門家(弁護士・会計士)=約350万円と高コスパ。金融機関からの紹介には新規融資でお返しし、関係を強化。